当研究所は、2009年11月、早稲田大学重点領域研究機構に属するプロジェクト研究所として設立され、2010年4月に、文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採択され、活動を開始いたしました。その後、重点領域研究機構(2009~2013年度)、総合研究機構(2014~2018年度)に所属する研究所として、人間科学学術院とスポーツ科学学術院が30年来蓄積してきた「脳と心の科学」のポテンシャルを「応用脳科学」という軸に沿って有機的に結びつけながら発展させ、具体的な成果として社会に還元することを目的として活動して来ました。その結果、400件を超える論文や著書を発表し、2010~2014年度の基盤形成支援事業の報告書や、統合データベースとして一覧できるようにするともに、シンポジウムのページに掲載したものを含めて、20回を超える一般公開の主催・共催・後援シンポジウム、研究会などの開催を実現して参りました。

 上記の10年間の活動によって、応用脳科学に関する当初の啓発的な役割はほぼ終えたと考えられましたが、年1回開催してきたシンポジウム&研究成果発表会では、毎年30件近い発表がなされ、少なくとも、研究所員や研究室所属の若手研究者、招聘研究員の間の情報交換や共同研究の推進などに寄与する機能を持つに至っていました。そのため、これからも関係者間の協同作業を促進するプラットフォームとしての機能は維持しつつ、一旦これまでの活動を終了し、新たに参加者を募ることによって、新しい研究テーマへの取り組みも開始することとして、総合研究機構に所属する応用脳科学研究所2.0(2019~2013年度)として再出発することにいたしました。

 現在、新型コロナウィルスのパンデミックに象徴されるように、世界は大きな大きな変動の時代を迎えています。ここから先は、『1984年』や『マトリックス』に描かれたような、マザーコンピューターに支配されたリアルとバーチャルが逆転した世界になっていくのか、『攻殻機動隊』や『エヴァンゲリオン』に描かれたような、あくまでも人間でなければ持ちえないものを中核にして、それとAIやアンドロイドを融合する世界になっていくのか、いずれにしても、人類は異次元へのジャンプアップを果たすことになるのではないかという予感があります。そのような中で、理系の伝統も文系の伝統も全ての学問の叡智を集めて、新しい時代を切り開いていく力の一端になるべく、当研究所も取り組んで行きたいと思っております。

 

2021年2月10日 応用脳科学研究所所長 熊野宏昭

自 己 紹 介

1960年 石川県に生まれる

1979年 ラサール学園卒

1985年 東京大学医学部卒

1995年 東京大学博士(医学)取得

 

 東京大学心療内科医員、東北大学大学院医学系研究科人間行動学分野助手、東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学(東京大学心療内科)助教授・准教授を経て、2009年4月から早稲田大学人間科学学術院教授、同11月に新規設立された早稲田大学応用脳科学研究所所長に着任。2016年9月より2018年9月まで早稲田大学人間科学学術院副学術院長・人間総合研究センター所長を兼任。 日本認知・行動療法学会元理事長、日本不安障害学会副理事長、日本マインドフルネス学会副理事長、日本心身医学会評議員、他。